Joke RFC 杉浦誤訳集

はじめに

RFC(Request For Comment) と言えば、インターネット標準を定めていたりす る、なにやらお固いイメージの文献である。

ところが、1年に1日だけ、奇妙な RFC が発行される特異な日がある。そう、4 月1日である。世界中のおちゃめな技術者がここぞとばかりに知恵を絞ってあ やしい規格を提唱してくる。

1998年夏頃の UNIX Magazine とか Parody 版 BSD Magazine 2001年4月1日号 の裏表紙の広告に触発されたこともあって、こういった RFC を集めて、ひま つぶしに杉浦誤訳してみたので、お暇な方はご賞味頂きたい。ただし、原文 (英語)でないと本来の味わいがでないし、杉浦の語学力に大きな問題があるの で、思うように訳せていない部分がままある。というわけで、原文と杉浦誤訳 を並べて読んでもらうといいかもしれない。とりあえず、フレーム対応の Web ブラウザを使っている方は、各 RFC のところに準備している「フレーム」の ところを利用すれば、左右2分割して原文と誤訳とを並べて表示するようにし ているので、ブラウザを横方向に目一杯広げ、フォントを小さめにして利用し てもらいたい。

なお、RFC そのものについては本 家ページを見てもらうのが一番だろう。RFC の番号を入力すればその RFC が見られるサービスもある。


Joke RFC

RFC 748 TELNET RANDOMLY-LOSE Option

1978年4月1日発行。「TELNET の RANDOMLY-LOSE オプション」。最 古の Joke RFC と推定される。おそらく telnet でリモート接続して いるときにあまりにブチブチ切れるのに頭に来てこんな皮肉を言いた くなったではないかと考えられる。誤訳 原文 フレーム

RFC 779 TELNET SEND-LOCATION Option

1981年4月1日発行。「TELNET の SEND-LOCATION オプション」。 Joke だと思って訳してみたんだけど、どうやらまじめな RFC だった ような。ステータスも PROPOSED STANDARD になってるし。ま、いいか。 ただ、何処までまじめなのかもいまいちわからない。 誤訳 原文 フレーム

RFC1097 TELNET SUBLIMINAL-MESSAGE Option

1989年4月1日発行。「TELNET の SUBLIMINAL-MESSAGE オプション」。 telnet でつないでいると、サブリミナルにメッセージを表示するため のオプションらしい。これで必要なメッセージがいつの間にかユーザ に伝わる。ただ、現在開発中だという、caps-lock を示す LED でモー ルス符号を流すのは受取り手のユーザが理解できなくて役に立たない と思うぞ。誤訳 原文 フレーム

RFC1149 A Standard for the Transmission of IP Datagrams on Avian Carriers

1990年4月1日発行。「伝書鳥による IP データグラムの送信に関する 標準」。要するに IP 通信の屋外線の部分を伝書鳩にして通信しよう というもの。誤訳 原文 フレーム

RFC1216 Gigabit Network Economics and Paradigm Shifts

1991年4月1日発行。「ギガビットネットワークの経済学とパラダイ ムシフト」。翻訳の品質が異常に悪くて恐縮です。読み返すとまるで 意味が通じてないし。ギガビットネットワークに超多重化して超低速 ネットワークを押し込めることを提案している。ネットワークが速い ことはいいことだ的な価値観に一石を投じている。 誤訳 原文 フレーム

RFC1217 Memo from the Consortium for Slow Commotion Research (CSCR)

1991年4月1日発行。「低速動揺研究コンソーシアムからのメモ」。 これまた翻訳の品質が劣悪。特に、組織の名前とかものの名前とかの 訳がいけてない。RFC1216 に対する「低速動揺研究コンソーシアム」 のコメントという形式になっている。超低速通信の軍事への応用や低 速通信をさらに遅くするための方法の提案といった内容。 誤訳 原文 フレーム

RFC1437 The Extension of MIME Content-Types to a New Medium

1993年4月1日発行。「新しいメディア向けの MIME Content-Type の拡 張」。人間をメールで転送したいらしい。そのための転送の規格を規 定しようとしている。著者は当時の副大統領に強い敵意を抱いている ようだ。誤訳 原文 フレーム

RFC1776 The Address is the Message

1995年4月1日発行。「アドレスがメッセージ」。次世代IPワーキン ググループからの、非常に大きなアドレス空間を準備し、そのアドレ ス自体で通信をしてしまおうという提案。話の内容より誰が発言した とか誰に向かって言ったとかそういうことがしばしば注目されてしま う風潮に対する挑戦と見た。誤訳 原文 フレーム

RFC1926 An Experimental Encapsulation of IP Datagrams on Top of ATM

1996年4月1日発行。「ATM 上の IP データグラムの実験的カプセル 化」。ATM といっても ATM メガリンクとかで出てくる通信回線ではな い。ATM, LAN などの単語が普通の意味と巧妙に置き換えられている。 通信の基本はモールス符号らしい。文中に出てくる、network beep order ってどういう順番なんだろう。やっぱり MSB First なんだろう か。それから、著者の電子メールアドレスがモールス符号で
-... -.-- --. --. @ ... ..- .- . - .-.-.- ... .
と書かれているのだけど、
-... -.-- --. --. @ ... ..- -. . - .-.-.- ... .
が正しいんじゃないかという気がする。誤訳 原文 フレーム

RFC2324 Hyper Text Coffee Pot Control Protocol (HTCPCP/1.0)

1998年4月1日発行。「ハイパーテキスト珈琲ポット制御プロトコル」。 ネットワークを通じて珈琲ポットを制御し、あわよくばネットワーク を通じて珈琲を手元に持ってこようという意欲的な規格。 誤訳 原文 フレーム

この RFC の中で紹介されている ネットワーク珈琲ポット は、2001 年 8 月頃売りに出されてしまっ たらしい。今は、その珈琲ポットの最後の雄姿がこの URL で見られる はず。

RFC2325 Definitions of Managed Objects for Drip-Type Heated Beverage Hardware Devices using SMIv2

1998年4月1日発行。「SMIv2 を利用したドリップした熱い飲み物用ハー ドウェア装置のための管理されたオブジェクトの定義」。RFC2324 で 規定した HTCPCP を実現するための MIB の実装に関する議論。SMI と か MIB のことを知らないので、本気で訳がおかしいと思う。 誤訳 原文 フレーム

RFC2549 IP over Avian Carriers with Quality of Service

1999年4月1日発行。「サービスの品質(QoS) を考慮した伝書鳥による IP 通信」。RFC1149 で規定した伝書鳩による IP 通信に対して QoS の考え方を加えて通信の優先度などを制御できるようにした。 誤訳 原文 フレーム

RFC2795 The Infinite Monkey Protocol Suite (IMPS)

2000年4月1日発行。「無限猿プロトコルスィート(IMPS)」。確率の 問題でしばしば議論される、無限匹の猿がタイプライターを好き勝手 に叩いた場合になにか意味があるものになるかどうかということを実 際に調べるために必要となる制御用のプロトコルを規定する。英語の 詩に関する知識がないとちゃんとした訳ができないような文章だった ので、一部、訳してない部分もある。 誤訳 原文 フレーム

RFC3091 Pi Digit Generation Protocol

2001年4月1日発行。「πの数字生成プロトコル」。デーモンの待ち 受けているポートに接続するとπを返してくれるというデーモンのた めのプロトコル。そのポート番号が6桁もあるから、いまの TCP,UDP では実装できない。非常に残念だ。サーバがテーブル参照によりπ生 成をしている場合に、出力すべき桁数がテーブルの範囲を超してしまっ た場合の動作についての言及もちょっと欲しかったかも。 誤訳 原文 フレーム

RFC3098 How to Advertise Responsibly Using E-Mail and Newsgroups or - how NOT to $$$$$ MAKE ENEMIES FAST! $$$$$

2001年4月発行。「電子メールやニュースグループを使った信頼さ れる広告の出し方もしくは $$$$$ あっという間に敵がいっぱい! $$$$$ とならないために」。こんな題名のものがまじめな RFC の訳は ないと思って訳してみたんだけど、どうやら本気らしい。というわけ で、これは JOKE ではない。最近はさすがに見かけなくなった MAKE MONEY FAST っていう鬱陶しい News の投稿みたいなものはやめましょ う、もっとちゃんとしたやり方がありますよという非常に建設的なも のである。まあ、要はメールマガジンみたいなものをうまく使いなさ いということらしい。既にこの RFC の内容にそったようなやり方をし ている企業はけっこうたくさんあるね。 誤訳 原文 フレーム

RFC3251 Electricity over IP

2002年4月1日発行。「電気オーバーIP」。IP パケットに電気を載 せて運べば伝送のアーキテクチャに画期的な変革が起こるだろうとい う規格。残念ながら、文中にどうやって IP パケットに電気をエンコー ドするかは記述されていない。全編にわたっておちゃらけモード全開。 参考文献として挙げられている ITU G.110/230V という規格は、G.109 と G.111 はあるけど G.110 がないところに目をつけたようだ。 誤訳 原文 フレーム

RFC3252 Binary Lexical Octet Ad-hoc Transport

2002年4月1日発行。「二進形式の字句オクテットのアドホックな転 送」。世の中 XML が大流行。IP, TCP, UDP のパケットを XML で構成 した、IPoXML, TCPoXML, UDPoXML を提唱。XML パーザを実装しさえす ればパケットの解釈までできてしまってこんなにオイシイことはない と主張する。そのあたりの論理展開は確かにあやしいが、DTD はちゃ んと作ってあるし、ネットワークアナライザの交換用の出力形式とし て採用されちゃったりするかも。IPoXML を実装しているネットワーク で DTD をネットワークを介して入手しようとすると・・・が本 RFC のハイライト。誤訳 原文 フレーム

RFC3514 The Security Flag in the IPv4 Header

2003年4月1日発行。「IPv4 ヘッダにおけるセキュリティフラグ」。 ファイヤウォールや侵入検知装置などの、ネットワークのセキュリティ を守るための道具において、悪意のあるパケットとそうでないパケッ トを区別するためのフラグを IPv4 ヘッダのあまり使われない部分に 押し込むと便利ではないか、というもの。著者は、おそらくパケット の断片化(fragmentation)が大嫌い。誤訳 原文 フレーム


「誤訳」ファイルは ISO-2022-JP コードで書いてある。

私より以前から Joke RFC の日本語訳を集めていらっしゃる方もあります。 URL は http://www.imasy.or.jp/~yotti/rfc-joke.html。私のものより高品質な 日本語訳を見ることができます。恥ずかしながら、私の誤訳も末席を汚させて 頂いております。

Joke RFC の日本語訳を集めた本「ジョークなしでインターネット技術は語れ ない!」(城戸政博 著、株式会社ラトルズ、ISBN4-89977-025-1、1900円)が発 売されました。2001年4月1日までに発行されたすべての Joke RFC が収録され た、貴重な1冊です。これは入手するしかありません!! (2002年4月4日記す)


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最終更新: Tue Apr 01 21:57:38 2003